引用:
ここまで読んだ本文では,次の2点が欠けている。
(1)業務量の見積もり
特に難しいのは,今回の社保庁の泥縄式対応でも明らかになった,加入者との対話に関する部分である。業務量を見積ることができなければ,必要な要員数も見積もれない。つまり,端末の数,出力装置の数,等々の設備システムの量も配置も何も決められない。現時点で把握できるのはせいぜいデータ量だけだ。
(2)新しい情報通信システムの導入適用をどのように進めるのか
一般に,新システムが導入適用されるときは,何らかの教育,訓練が対象部署に対して実施される。それらのことには最適化計画は何も触れていない。
「業務品質の向上」のところで,次のように述べているだけである。
==========以下,最適化計画から抜粋==========
ウ 業務研修の拡充
これまで社会保険大学校において実施している集合教育に加えて,平成18年度より業務知識レベルアップのための通信教育を導入する。また,府省共通業務・システムである「研修・啓発業務」の最適化に伴い構築されるシステムの活用に向けた検討を行う。これにより,業務研修の充実を図る。
==========以上,最適化計画から抜粋==========
教育訓練の効果はまさにその内容によるが,現段階では社保庁そのものが再編されることだけが決まっただけ。上で述べられている社会保険大学校が教育訓練についてどれほど踏み込めるかは未知数だ。そもそも,社会保険大学校は日本年金機構従業員の教育訓練を担うことになるのだろうか。
運営組織の変更(改革)と情報通信システムの刷新が同時並行で進んでいる。多くの場合,組織の変更内容を確定し,その後に情報通信システムを刷新するという手順を踏む。しかし社保庁では,そうではないらしい。何か漠とした不安が脳裏にはある。
最適化計画に従って厚労省は「日本年金機構業務システム」の調達を公示した。その資料は。同システムの調達情報のページから入手できる。
国民年金制度が日本年金機構に委託された時点で,国民年金制度はさらにおかしくなるだろう。最適化計画は,日本年金機構への業務委託を前提として作成されているわけではないからだ。つまり,日本年金機構の組織運営と情報通信システムとの間で整合性がとれなくなる可能性が大きい。そもそも,そもそも,情報通信システムに合わせて組織を運営を運営する,という馬鹿馬鹿しい約束などが守られるはずもない。システムの一部が使われなくなったり,時として全面再構築が必要だなどという事態に陥るだろう。
現に,5000万件に上る納付記録が「店ざらし」になっているのは,社保庁(あるいは社会保険事務所)の組織運営について何ら展望も方針もないまま情報通信システムを導入・適用したからである。
引用:
さて,ここまで前掲の資料を読み筆者が感じたのは,次の点だ。
(1) 主語がない
社保庁が「厚生労働省情報政策会議決定」と表記して提示した社会保険業務の業務・システム最適化計画の記述には主語がほとんどない。新しい国民年金保険が,どのような組織で運営されるのかが決定していない時点では,そのようなことも仕方がないのかも知れない。しかし,一般に情報システム化計画を作成する場合,そこには必ず業務の分担と遂行の当事者(部門名)を組織決定した上で書き込む。
何をそんな主語くらい,という向きもあるだろうが,主語がないというのは当事者意識がない表れだ。主語がない文書は,運営組織が決定していない段階で業務システムを企画・開発・設計してしまうことの難しさと危うさの両面を物語っているように思う。
すでに一部については発注先が内定しているようだ,だがこれは最初から「使われない情報システム」になると分かっていながらプロジェクトをスタートさせてしまったことを意味するのではないか。
(2) 組織設計,業務設計不在の計画
資料は膨大だ。これらの資料は,どのようにして作成されたのだろうか。ガイドラインは78ページに渡り,情報通信システムの企画をどのように取りまとめなければならないかを示している。このガイドラインに沿って社会保険業務の業務・システム最適化計画は取りまとめられた。
各所の報道で伝えられるところでは,「社保庁にはほとんど情報通信システムに専門的な知識を有する人材がいない」とのこと。では,この計画の作成に当たっては,厚生労働省の他の部局や他省庁から必要な人材を集めたのだろうか。それとも作業を外部委託したのか。
最大の疑問は,この最適化計画には「将来」と明記された部分があって,660ページほどの「業務流れ図」が添付されている。その図では個々の業務が説明されている。この業務流れ図の表頭側には,組織(部署)名が明記されている。この組織名や部署名は「現在」のもので,いまだ明快には説明されていない日本年金機構の運営形態には,即していない。つまり受け皿となる組織形態が不透明なまま情報通信システムの開発が始まるということになる。
新しい運営組織が企画されていない時点で情報システムを企画できるのか。そもそも,その業務を誰が担うのかも決まってはいないのだ。最適化計画では運営組織の形態やその組織の管轄については言及していない。
引用:
先日筆者が記した「片山さつき議員の『システムは数カ月でできる』発言に思う」には,読者諸兄から多数のコメントをいただいた。この場を借りて御礼申し上げたい。
ただ,筆者は正直少しとまどっている。たまたま「朝まで生テレビ」を視聴していて,情報通信システムについて無茶な解説やら主張やらが飛び交っているな,との印象を抱き,その感想を述べたまでだった。
もちろん,いい加減にこの番組を眺めていたわけではない。録画した番組を見直しつつ,出演者の発言を追った。そして無茶を通り越して非常識だと思えたところをピックアップしたのである。
CRMを専門とする筆者は,社保庁に代表される公的機関の情報システムについては門外漢そのものである。だが,筆者は複数の企業で情報システム部門のマネジャを務めていたことがあるので,一通りの知見はある。それに年金はいずれ筆者自身が大きく関わる話題だ。
そこで筆者は引き続き,社会保険庁(以下,社保庁)の情報通信システムについて,主にインターネットを通じて思い付く限りの情報探索を試みてきた。併せて,毎日丹念に新聞(日経と朝日)を眺めて記事をピックアップし,時系列に並べて読み返すという作業を続けている。
こうした作業を続け,情報を整理するにつけて,社保庁には情報通信システムのマネジメントという視点が欠けている,ないがしろにしているという印象が強まっている。
これまでの経験と若干の知識をもとに,(言い方は悪いが)勝手気ままに最適化計画の内容について批評を加え,問題提起を試みることにした。
まず,筆者は次の公開文書を入手し分析した。
○ 社会保険業務の業務・システム最適化計画
添付資料はこのページにある。
○ 業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)
各府省情報化統括責任者連絡会議事務局が2004年2月10日に作成,公開した第2版がここにある。
社保庁から有識者会議へ提出された社会保険業務のシステム最適化計画(資料)によると,添付資料で「全国健康保険協会が行う健康保険業務の業務・システム最適化計画 」が説明されている(PDF資料)。
これら最適化計画に基づいて,競争入札により受注者を決定。新システムの構築プロジェクトを進めていくという。
詳しくは・・・・・・ http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070828/280573/

引用:
この「朝まで生テレビ」で片山氏は「(社保庁には)SEがいない」とも発言した。片山氏がどんな役割を担うIT専門家をSEと呼んでいるのかは分からないが,SEがユーザー側の組織にいるかいないかは,さほど大きな問題ではない。根本のシステム企画の部分はさておき,その時々に応じて専門家に依頼すればよい,というのが筆者の考えである。
今の社保庁に必要なのは,いわゆるCIO(情報最高責任者),つまり組織運営を左右する情報システムの利活用について,専門的な知識,経験,見識を備えた上級マネジメント(経営陣)だ。
例えば,日本郵政公社にはCIOがいる。吉本和彦理事が民営化に向けて情報システムの指揮を執っている。吉本氏は民間の金融機関でCIOを務めており,その後郵政公社へと移った(「経営とIT新潮流」に掲載された関連記事)
「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」の第10回議事録要旨には,大山永昭委員による発言が次のように書き残されている。CIOの必要性について上手く説明している。少し長くなるが引用する(議事録要旨はこちら)。
『いよいよ組織の形が決まり,社会保障制度がどういうふうになるかも出てきて,それからコンピュータのシステムの開発に入るわけだが,いわゆる PDCA(Plan−Do−Check −Act)の中のまだPを作りつつあるという状況。特に3ページ目(筆者注:会議中の資料)にもあるように,社会保険と労働保険の徴収事務の一元化という行政改革の課題から出てきた話があるが,私が今回見せていただいた印象は,ひょっとするともっと良い方法があるかもしれないということである。
何を申し上げたいかと言うと,例えば,厚生労働省にもCIOとCIO補佐官の方がいらっしゃる。ところが,CIOの方は,社会保険庁が厚生労働省の外局だからということもあり,現在,全く違う体制で,この緊急な課題に対応するためのプロジェクトチームが長官の下にできている。この状況は理解できるが,一方では,厚生労働省の中を見るだけでも,業務や運営の仕方,それからさらには制度,そしてITの技術の全てを知っている人がいれば,もっとうまい方法が見つかるのではないかという印象を持った。
CIOは,本来,このように全体を統括することが役目である。ITガバナンスの必要性も書いてあるが,全体を知っている人がいなければITガバナンスを確立することはできない。ここから作業が始まるので,このような人が1人もいないとしたら,厚生労働省がこれからITを使ってここに書いてあるとおりのステップで踏み出そうとしても機能しないのではないかと危惧する。』
SEとCIOは違う。CIOは先ほども述べたように上級マネジメントで,組織全体のITの利活用に関して責任を負う人である。SEがいるかいないかというのは枝葉末節の話題である。筆者は片山氏の発言にはITがらみの難問を解決するための視点や知識が欠けていると思った。
詳しくは・・・・・・
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070705/276798/?ST=watcher&P=2

引用:
6月29日金曜日の深夜,テレビ朝日で「朝まで生テレビ」が放送された。与野党の国会議員が出席し,国民年金に関して意見を戦わせていた。
その番組を見ていた筆者は,片山さつき衆議院議員の発言に,思わず起き上がって映し出されている画面を注視した。片山氏は「(新しい年金システムは)数カ月でできる」と発言したのだ。筆者は「どうやったら数カ月でできるのか説明してください」と画面に向かって叫びそうになった。
同時に,筆者は片山氏の「数カ月でできる発言」には何かの根拠があるのではないか,と考え始めた。国会議員,それも自由民主党広報本部副本部長兼広報局長としての発言だから,さすがにまるっきり根拠や確信のないことは言わないだろう,と考えたからだ。
テレビに映し出された片山氏の発言はそこで終わったのだが,隣席の出席者から小声で訪ねられたのだろう,小さな声で「マイクロソフトの…」という片山氏の私語が短い時間流れた。
筆者はその私語から憶測を始めた。マイクロソフトの誰かが片山氏に対して「社保庁の年金記録に関する情報処理システムの刷新は数カ月でできる」などと説明したのだろうか。あるいは,マイクロソフトから社保庁の新システムに関する提案のようなものがあったのだろうか。
年金システムに関してマイクロソフトのWebに何か掲載されているかもしれない。マイクロソフトは公共機関向けにGovernment WebというWebサイトを開設している。
マイクロソフトはこのWebサイトで「Connected Government Framework (CGF) 」と題する基盤整備コンセプトを説明している。ただ,ここには「数カ月でできる」という片山氏の発言につながりそうな情報は見出せなかった。マイクロソフトと「数カ月でできる発言」の関係はないのかもしれない。
筆者の過去の経験や知識からすると,社保庁の年金システムの開発が数カ月でできるというのは,まず信じられない。ITproの読者の皆さんも同意してくださるのではないか。
例えば,米国の巨大な私的年金基金(特に401K)が運用している情報システムをそっくり複写させてもらい,必要に応じて改変し導入する,といったアプローチであれば,可能性はゼロとはいえない。しかし,それでも数カ月で完了させるのはまず無理だと言っていい。たとえシステム企画や要求定義が済んでいたとしても,だ。
詳しくは・・・・・
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070705/276798/



























