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動かない社会保険業務システム最適化計画 : 「主語なし計画」の怖さ(多田正行のCRM Watchdog:ITpro)
引用:
さて,ここまで前掲の資料を読み筆者が感じたのは,次の点だ。
(1) 主語がない
社保庁が「厚生労働省情報政策会議決定」と表記して提示した社会保険業務の業務・システム最適化計画の記述には主語がほとんどない。新しい国民年金保険が,どのような組織で運営されるのかが決定していない時点では,そのようなことも仕方がないのかも知れない。しかし,一般に情報システム化計画を作成する場合,そこには必ず業務の分担と遂行の当事者(部門名)を組織決定した上で書き込む。
何をそんな主語くらい,という向きもあるだろうが,主語がないというのは当事者意識がない表れだ。主語がない文書は,運営組織が決定していない段階で業務システムを企画・開発・設計してしまうことの難しさと危うさの両面を物語っているように思う。
すでに一部については発注先が内定しているようだ,だがこれは最初から「使われない情報システム」になると分かっていながらプロジェクトをスタートさせてしまったことを意味するのではないか。
(2) 組織設計,業務設計不在の計画
資料は膨大だ。これらの資料は,どのようにして作成されたのだろうか。ガイドラインは78ページに渡り,情報通信システムの企画をどのように取りまとめなければならないかを示している。このガイドラインに沿って社会保険業務の業務・システム最適化計画は取りまとめられた。
各所の報道で伝えられるところでは,「社保庁にはほとんど情報通信システムに専門的な知識を有する人材がいない」とのこと。では,この計画の作成に当たっては,厚生労働省の他の部局や他省庁から必要な人材を集めたのだろうか。それとも作業を外部委託したのか。
最大の疑問は,この最適化計画には「将来」と明記された部分があって,660ページほどの「業務流れ図」が添付されている。その図では個々の業務が説明されている。この業務流れ図の表頭側には,組織(部署)名が明記されている。この組織名や部署名は「現在」のもので,いまだ明快には説明されていない日本年金機構の運営形態には,即していない。つまり受け皿となる組織形態が不透明なまま情報通信システムの開発が始まるということになる。
新しい運営組織が企画されていない時点で情報システムを企画できるのか。そもそも,その業務を誰が担うのかも決まってはいないのだ。最適化計画では運営組織の形態やその組織の管轄については言及していない。
引用:
情報通信システムのマネジメントに関する筆者の認識では,
○ まず業務内容を策定する
○ 次に業務量を見積もる
○ 組織と要員数を算定する
○ 情報通信システムが提供する業務支援サービスを策定する
という段階を踏む。
最適化計画は最適化された業務設計になっているのか。専門家の評価が必要だろう。
(3) 「検討する」ことばかり
本文に14カ所,「検討する」という文言が出てくる。一つひとつが重要なので検討して判断する,という意味なのだろうか。あるいは,現時点では判断が付かないので,いずれ決めなければならないということなのだろうか。
「検討する」という文言が出てくる14カ所(文章)を次に列記してみた。業務と情報通信システムへの社保庁の取り組み姿勢がうかがえる。
==========以下,最適化計画から抜粋==========
(エ)共済組合からの情報提供による国民年金被保険者の職権適用
厚生年金保険の資格喪失届があり,国民年金の資格取得届のない被保険者については,これまで勧奨状を送付して国民年金の資格取得を促しているが,社会保険オンラインシステムで保有している厚生年金の加入情報や共済組合から資格情報を受けることにより,国民年金の未加入者をシステム的に把握し職権適用を実施することについて,検討する。(被用者年金制度の一元化を踏まえて実施)
(イ)市町村を経由して受け取る届書等
市町村を経由して受け付ける国民年金業務の届書報告書については,市町村独自の様式になっていることから,市町村への協力を要請し,報告書様式の統一を図るとともに,磁気媒体化による双方向の情報提供を実現する仕組み作りを検討する。(平成18年度までに結論を得る)。
オ データ更新タイミングの見直し
コンビニエンスストア等からの国民年金保険料収納記録の更新契機を早期化することにより,保険料納付済みの方に対する納付書等の発送誤りを減少させる。(平成22年度実施)
なお,年金支払の迅速化については,年金給付システムのオープン化実施時に向けて引き続き検討する。
イ 被保険者への情報提供の充実
これまで国民年金第一号被保険者を対象として,社会保険料控除証明書の送付に併せた年金加入状況のお知らせや,インターネットを活用した年金加入状況提供等に取り組んできているが,さらに,平成20年度にポイント制(保険料納付実績とそれに基づく年金額の見込みを行政側から定期的に通知する仕組み)を導入する。これにより,年金加入記録を簡便に確認することを可能とする。また,年金カード導入を検討する。
イ 年金給付システムの集約
年金給付システムのメインフレームについては,平成20年度までに,最新機種への更改と集約を実施し,ハードウェア資源の節約を図る。併せて一般競争入札導入の可能性を検討するなど調達形態および管理運営方法等の見直しによって経費削減に努める。
(11) 端末資源の汎用化・共通化
社会保険事務所等に設置されている社会保険業務用専用端末およびプリンターについては,平成19 年度までに,一部の特殊帳票を出力するためのプリンター等を除き汎用品に更改することにより経費節減を図るとともに,セキュリティに十分配慮した上で社会保険業務用の端末を社会保険庁LANの端末としても利用できるようにすることで社会保険庁LAN端末の一人一台化を実現する。
平成22年度までに,汎用品化された社会保険業務端末と年金給付システムの接続の可能性について検討する。
ア 徴収事務一元化の推進
これまで,社会保険事務所に社会保険・労働保険徴収事務センターを設置し,保険料算定の基礎となる賃金や保険料額の届出の受付等の事務を実施しているが,さらに,以下の取り組みについて,平成18年度実施を検討する。
(筆者注:個別業務の記述は省略した。)
イ 事業所(事業場)情報の相互参照事務の効率化
社会保険と労働保険とで対象とする事業所(事業場)の範囲等が異なるため,社会保険に係るシステムと労働保険に係るシステムとでは異なる事業所(事業場)コード体系を使用している。事業所(事業場)情報の相互参照事務を効率化するため,将来の事業所(事業場)コードの共通化に向けた検討を進めるとともに,記録管理システムオープン化後のシステムでは法人コードを記録することを検討する。
(16) 霞が関WAN,LGWANの利用
現在,紙により行っている市町村を経由して受け付ける国民年金業務の届書報告書については,市町村への協力を要請し,報告書様式の統一を行った上で, LGWAN等の回線利用により双方向の情報提供を実現する仕組みを作り,併せてシステムを簡素化し,効率化することを検討する。また,府省共通業務・システムである「地方公共団体に対する調査・照会業務」の最適化に伴い構築されるシステムの活用に向けた検討を行う。
現在,磁気媒体により行っている共済組合との資格情報の交換について,霞が関WAN,LGWANを活用することにより,簡素化,効率化することを検討する。
ウ 利用者認証機能の強化
個人情報等を取り扱うシステムを利用する際の利用者認証において,現行の磁気カードによる認証から,より精度の高い認証方法の利用を検討する。
また,府省共通業務・システムである「職員等利用者認証業務」の最適化計画の今後の策定状況を見極め,必要となる要件及びスケジュールを考慮した上で,活用を検討する。
(5) 業務継続計画の策定とバックアップセンター設置
年金の支払いなど国民生活に直結したサービスの停止は,国民生活への影響が非常に大きいことから,平成18年度までに業務継続計画を策定し,計画に沿ったバックアップ 機能の強化及び新バックアップセンター設置の要否,設置時期及び設置場所等を検討する。
==========以上,最適化計画から抜粋==========
社会保険業務が新しい組織に引き継がれたとき,誰がCIOとなり,どのような情報通信システム・マネジメントを実施するかは,今の時点では定かではない。ただ,いくつかのものを除き,「いついつまでに検討して」という期日の設定が見られない。「年金業務・社会保険庁監視等委員会」が監督するのだろうか。検討した結果実施するにしても,結果によっては情報通信システムの機能設計に変更が必要になる。
詳しくは・・・・・・・
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070828/280573/?P=2
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